新年にちょっと長めの「テープのお話」 営業開発部/秋葉隆史(53歳)
2020/01/09
あけましておめでとうございます。
新年早々、この春入社の新入社員の内定式がありました。
希望に満ち溢れるキラキラした瞳に、この世界はどう映ったのでしょう。
簡単な研修も行われ、編集中の先輩女性ディレクターが話してくれたのが
「小さいでしょう!これでロケするの今は。SxS(エスバイエス)っていうんだけど
テープの代わり。これで4時間も撮れちゃうんだよねぇ~」
そうなんです。日本中の各局で進んでいる“テープレス”の流れが
弊社メインの仕事場であるミヤギテレビにもやってきました。
昨年年末の編集室更新のタイミングで、
取材カメラもHDcamからSxSへとかわり
MAに完成品を渡すのも、もはやテープではないのです。
ミヤテレの技術担当者は気合が入っていて「令和元年はミヤテレファイル化元年!」と銘打っていました。
でもね、そうですか…テープはお払い箱ですか。
うーん、なんか寂しいですねぇ。「長年の友達の引退」ですもんね。
というのも小生とビデオテープは、ホントに縁が深い間柄なのです。
だから新年ですが、あえて今日はビデオテープの話をさせてください。
専門家というわけではありませんが、テープマニアのマニアックトーク!
長文ですので、お時間のある方はおつきあいくださいね。
まずは放送用・業務用ビデオテープのお話から…
私が最初に出会ったのは「1インチ」と言われるテープでした。
今から30年ほど前、学生時代にアルバイトをしていたのが
TBSのVTRテープ室というところで
毎日のように数々の番組へ収録用テープを出庫したり
保存されている番組のテープを管理をしたりという業務でした。
テレビっ子の私には、実にパラダイスな職場で
1インチのテープを両手と小脇に挟むと

8本持ちを再現したかったのですが、局内で現存する1インチはそんなにありませんでした。
一度に8本運べるぜ~!なんて喜んでおりました。
当時まだ局には、さらに古い「2インチ」というテープも保存されていて
こちらは重かった。60分テープで7~8キロはあったのでは。
当然古い番組が収録されていて
それを保存用に1インチへダビングするという作業の準備では
「私は貝になりたい」「時間ですよ」「3年B組金八先生」など
古いドラマのテープラベルなどを作ったりして
これまた実にパラダイスな仕事だったんです。
1インチテープというのはテープの幅が25.4mmなんですが
2インチはほぼ倍の、50.8mm。
というわけで技術が進むとテープの幅が、どんどん減っていきます。
こちらは「Uマチックビデオテープ」通称「シブサン」。
1インチの3/4の幅なのでシブサンと呼ばれていました。
当時、1インチテープもそこそこ高かったようで予算のない番組や報道の同録、
またダビングして各局に配る音楽プロモーションビデオなどに使われていました。
でも画質はあまりよくない印象でしたが
弁当箱のような容姿が、どこか憎めない奴でもありました。
そんなVTRテープ室で、この業界にデビューしてしまった私は
学校を出てまたまたテープに囲まれる仕事を選びました。ポストプロダクションの「編集マン」です。
東京・赤坂にある割と大きなその会社は
バブルが終わった直後でも、同期入社が20人以上いました。
「撮影」「編集」「音声」「テレシネ」「送出」と課が分かれていて
当時人気があったのは「音声課」でMAのミキサーになりたいという声が多かった。
もちろん私は「編集課」を希望し、その後、アシスタントを経てエディターとなるのですが、
そのころの相棒は収録テープの「1インチ」と
まぁベーカムとは、ここから長い長いお付き合いになるのですが…。
取材用にコンパクトなテープをと開発されたベーカム。
テープ幅は1インチの半分、1/2インチ。
実は家庭用のVHSやβのビデオテープと同じ幅なんです。
でもシブサンに比べたら画質がup!
画質も音質も更にupです。
このベーカムSPが私が一番使ったテープでしょうか。
実は今でも処分できずに大量に残っているんです(涙
そうこうしているうちにデジタルの波がやってきます。
長年収録テープとしての地位を誇っていた「1インチ」が
デジタル記録の「D-2」へとバトンタッチ。
1インチに比べると容易に扱えて
長時間番組でもリール分けしなくてOK。なかなかの優れもので
当時、ビデオソフトやレーザーディスクのマザー(マスターテープ)
などにもよく使われていました。
さらに画質の良い「D-1」
NHKが開発した「D-3」なんてのもありましたね。
そして取材テープではあたりまえの「ベーカム」にも
デジタル記録できるものが登場。
青い色のクールな奴。コンポーネント映像信号を記録するので
合成ものなどの収録に優れていたり、DVDのマザーになったりしました。
でも時代はまだまだ四角い画面、4:3だったんです。
そして2005年12月、宮城県でも地上デジタル放送がスタート。
ついにハイビジョン時代が幕開け。もちろん16:9、収録テープも変わります。
それにしてもこのアナログから地デジへの転換期が
一番の衝撃でしたね。
ハイビジョン 高精細 高画質 高音質 まさにその通り。
美しい~すげ~キレイ!デジタルすごい!と思いましたもん。
でも、今ではそれが当たり前。慣れちゃうもんなんですねぇ~
というわけで「HDcam」が放送用・業務用ビデオテープの歴史としては、最後になるんでしょうか。
この後は「XDcam」や「SxS」などメディア収録へと替わってしまいました。
東京オリンピックに、4K、8K …この先、どうなっていくのでしょうか
いやぁ~駆け足で、と思いましたが長文になってしまいました。う~ん、語りつくせない「テープの世界」
もちろん登場したテープ以外にも
「MⅡ」とか「DVC」とかもあるんですが
興味のある方はウィキペディアの「ビデオテープレコーダー」の項が
大変詳しいのでご参照ください。
さらに本当は、家庭用ビデオテープの話もしたかった(悔
「VHS」「S-VHS」「VHS-C」「D-VHS」
「β」「ED-BETA」「8ミリビデオ」「Hi-8」「miniDV」「HDV」

これはほんの一部。ダビングしたとて生きてるうちに再び見ることがあるのだろうか⁉
なぜなら、今でも私の周りには自宅にも会社にも
「VHSテープ」が山のようにあるからです。
(なかなか捨てられない性格なのです。。。汗)
今年こそは、ダビングしてどんどんディスクに焼かなくちゃ!
いつまでたってもアナログ人間の秋葉でした。