ベテランのIKKO(一考) ディレクター&カメラマン/佐藤安彦(48歳)
2019/05/09
このホームページでブログを閲覧している方は、多少なりともテレビ業界に興味がある方だと思うので、
ベテランとしてテレビのことを考えてみることにします。
今日のお題はカメラのフレーム
- カメラのフレームについて
テレビのカメラとは「目の前の現実を切り取り、非現実なものに記録する装置」と言っても良い。
そこには必ずフレームというものが存在する。
前述した“切り取り”というのが、まさにフレームである。
フレームとは芸術作品に欠かせない枠で、絵画・演劇・写真・映画など
そこにいつも存在して、
制作者が表現という意図を伝えるために格闘してきた神聖な場所とも言えます。
禅問答みたいですが
「現実をフレームで切り取った時点で、
フレームに入らなかった現実が、必ず存在する」
ということである。
カメラで切り取り撮影して放送した時点で
カメラで切り取らずに撮影しなかった世界が一緒に存在し、
…それも現実の世界なのです。
人間が目にする現実は、360度上下左右高低、無限の世界です。
その無限の世界の中でフレームという16:9のサイズに切り取るというのは、無限の選択肢があります。
その無限の選択肢の中で「このフレームだ」と決定するのは
カメラマンの意思、または そのフレームを撮影するよう指示したディレクターの意思なのです。
カメラマンやディレクターになりたいという人は、
この決定力を求められます。
テレビのロケ(ロケーション撮影)では、
1カット1カット毎回、正しいと思われる決断をしながら、カット数を集めていく…
これがロケでのカメラマンなり、ディレクターの仕事のひとつです。
ということは今、お茶の間のみなさんが見ているテレビは、
多くの人たちの決断をした結果の映像を見ているということになるのです。
そして、その映像には多くの人たちの意図が必ず込められている…
鑑賞する人たちへ一方的に放送されます。
感じ方は人それぞれですが、
伝える方には確固たる意図がある。
この関係性は、
テレビを無料で見られるという大発明家が考え出して以来
延々と続いています。
テレビはフレームの中に切り取られた現実のひとつであり、切り取られなかった現実もある。
最近、メディアリテラシーという言葉を良く耳にします。
これからテレビ業界を目指す方は、
フレームには映らない世界に想像力を働かせられる
そんな人物が必要なのかもしれない…。